6-2 走りと燃費と耐久性向上の両立
プリウスが納車されて2年間が過ぎたので最終的なまとめを報告しよう。
納車されて約1年過ぎた頃より「ハイブリッドシステムに対してMVSは効果が得られるか?」と、MVS実験や開発に取り組んできたが、開発車両としてプリウスは大活躍した。その結果は後で詳しく解説するが今までのガソリン車と同様に有効であることが確認できた。2年間に渡って取り組んできた高度なチューニングアップなので漠然と列記するのではなく、項目を作って解説してゆく。

1:乗り心地・操縦安定性・乗り心地の3要素のバランスを取る。
プリウスにはグレードにより16インチホイール仕様と17インチホイール仕様の設定があり、16インチの方が乗り心地に優れるが操縦性のレベルは低くなり、17インチは操縦性に勝るが乗り心地はゴツゴツ感が強いという特性で評価は低くなる。この評価が示すように乗り心地と操縦性は、お互いに相反する傾向を示すのが常識である。更に、高度なチューニングを行う場合は、ここに燃費の良し悪しが加わり、相互に関連してくることを念頭に置いて捉える必要性が出てくるために、より複雑化する。
私は両立を図るべく、先に解説したようにタイヤ&ホイールを即座に交換した。結果は大成功で、かなりレベルアップし喜んでいた。人間はしばらく味わうと、それが普通の状態に思えてきて更に上を目指す。普通はタイヤ銘柄を変更したり、ホイール銘柄を変更するのが常套手段であるが、タイヤもホイールも、この時点では最善の製品を選択したつもりなので、そこを変更しないで上を目指すことにした。
 最初に行ったのはトムス製ホイールナットをBBSのラグナットに交換することで更なるバネ下重量の低減を図ってみた。結果は当然ながら悪くはなかったが「抜群に」というほど変化は感じなかった。
タイミング良くMVS開発に取り組んでいたので、チタン合金削り出しナットを試してみた。結果は上々で、軽量ホイール+ミシュランLCの組み合わせで手に入れた上質な乗り心地や操縦性が悪化するのではなく更に改善された。一般的な市街地走行に於いて、ホイールナットの重量差でバネ下重量が変化したとしても、乗り心地や操縦性が大きく変化することなど有り得ないと考える方も多いことと思われる。また、価格的に7〜8万円をホイールナットのみに投資できるか、車に何を求めるか、感覚的なセンサーがどこまで発達しているのかなどで議論は分かれるので、絶対に効くとは書かない。人によって価値観は大きく異なるのだから・・・。

※写真説明 左側より、純正・トムス・BBS・チタン

参考にする方のために重量測定を行っているので発表しよう。
1:純正 1個=68.3g 一輪5個=341g 1台分20個=1366g
2:トムス 1個=59.9g 一輪5個=300g 1台分20個=1200g
3:BBS 1個=31g  一輪5個=155g 1台分20個=622g
4:チタン 1個=17g  一輪5個=85g  1台分20個=342g

文章や数字ではピンと来ないが「チタンナット4個分の重量と純正ナット1個の重量が同じ」と書けばチタン製が極端に軽いことが解っていただけるだろう。純正品全部の20個と、チタン製の20個の差は1kgであり、車両重量の1kgの違いで見るのではなく、あくまで一輪当りのバネ下重量で341gに対し4分の1(256g)の軽量化+その他の要素(応力を逃がす形状他)で効いてくるのである。また、エンジンで言えば、バルブ重量が数十グラム軽いと違ってくるように、少しの重量差が効果的に効いてくる場所があるのだ。この点が理解できていないと、チューニングの真髄は語れない。あくまで得られた結果で捉えるべきだ。

燃費が命の燃費思考の考え方では、ホイールやタイヤが重いほど、フライホイールと同じ原理で慣性力が作用するため、アクセルを離した際の惰性走行の距離が稼げるようになるため燃費に優れると考える。また「発進直後の動き出しは重量が重いほど鈍くなる」と頭だけで思考すれば当然の論理となるが、実際には異なってくる。その理由は、走りは総合力で決定するため、弊社製品のように、ミッションの抵抗を低減させたり、MVS施工でモーター駆動力を向上させることで解決できる問題であるからだ。有効な対策を知らない方であれば、まるで違った方向性を考える。車好きでも色々な考え方があるので、ともかく見た目重視で20インチの大径ホイールを履かせ、車高を落として満足する方も見受ける。走りのポテンシャルを高める方向性とは真逆な選択。
この辺りは、車を単純に趣味の道具と捉えるか、通勤や趣味の移動手段と捉えるか、運転する楽しみを追求する嗜好品と捉えるかで、大きく変わってくるため、本人が満足すれば良いのだから、他人が口を挟むことは、できるだけ避けたい。

抵抗を減少させ惰性走行の効率向上を図るならミッションにX1またはX1FS添加が大きく貢献したし、エンジンオイルをエストレモオイルに交換することで怖いほど惰性で転がることはアタックユーザーなら経験済みのことだろう。あまり走りが過激過ぎて怖いと感じたり、ブレーキ強化をしたくなったら、MVSやD1&D2などのブレーキ強化策(他のアイテムに比較すると意外と安く出来る)を盛り込むことで簡単に解決できるが、弊社製品を知らない人であれば、まったく異なる解決策を探る他はあるまい。

2:2年間の実際の燃費はどのくらいか?
ガソリン価格は円高の影響で落ち着いているが、いつ高騰するか余談を許さない。昔と違って燃費を無視して語れないので結果を知りたいことでしょう。
2年間を費やし、自分好みのマイ・プリウスが完成した。燃費をそれほど犠牲にすることなく「走る楽しみや快感を追求」してきた。しかし、プリウスを購入する動機として「高燃費」が最大のポイントということは歴然としている。そこで2年間の燃費データーを公表してみよう。

納車後、2年間の走行距離は約24000km トータル実燃費は17.50km/L
実燃費は満タン法。トータル給油量から算出しているため誤差は限りなくゼロと言える。この燃費を良いと捉えるか悪いと捉えるか、意見は分かれるでしょう。私は満足、満足。

最低燃費はMVS開発で「パワーモード+スロコン最強」で過激なテストを繰り返した結果。
2010.9.15 ODメーター13041km 走行距離375.8km=給油量26.7L
メーター表示は15km/l 実燃費は14.07km/L

最高燃費は一度だけノーマルモードで燃費を気にした運転を心がけた結果。
蓼科湖前のスタンドで満タン、白樺湖から諏訪IC、中央高速道、富士五湖有料、東名高速道を通過して会社迄。
2011.10.26 ODメーター23991km 走行距離247.6km メーター表示26.7km/L

給油はしていないが実燃費はマイナス5〜10%だから約24km/L〜25.37km/Lと判断できる。この結果が歴然と物語ることは、
◎仕様よりも運転方法で大きく変わる。
◎急加速をする、ゆっくり加速するで大きく変わる。
◎下り坂、平坦路は高燃費をマークするが、登坂時は急激に落ちる。
◎エアコン、暖房を使用するかしないかで大きく変わる。
すべて、当たり前のことだが・・・。

実燃費が17.50km/Lを悪い燃費と捉えるか、良い燃費と捉えるかは人それぞれで意見が分かれる所であろう。個人的には走りを楽しみ3人乗車の頻度が多く冷暖房も我慢しないで常時使用し、MVS開発で走り回った点を考慮すると、ハイブリッドでなければ半分の燃費だったと推定できるので満足できる結果と判断している。車両重量が1500kgもありボディサイズもカローラクラスではなく中型車サイズということを考慮しての判断である。少し前の軽四輪の実質燃費がターボ車で10〜12km/L,自然吸気エンジン車で13〜16km/Lだったことを思えば信じられない燃費とも捉えられる。燃費が悪いという方の根拠はカタログ表示燃費を元に考えるからであり、JC08モードに変更されても、あくまで比較するための特別なモードであり実燃費とは異なり、渋滞や信号待ちや坂道など各種条件の違いを盛り込んでいない。JC08モードの8割掛けが大雑把な実燃費ではなかろうか。
車載燃費計に誤差が出ることは避けられない。その理由は、インジェクター噴射量(回転数と燃料噴射データー)と、ABSセンサーの信号(車軸回転数))から、コンピューターが演算処理して表示されるから、タイヤのスリップ、タイヤの磨耗、タイヤ空気圧、タイヤサイズ変更、速度計の誤差などの影響を受けて誤差が出るため、今後も誤差が無くなることは無い。その理由とは、ベンチ室での測定は、実際に流れた燃料を測定して算出するが実車応用には難しいからである。

3:高次元な操縦安定性と操縦安全性の達成。
私のチューニング目的は何か?
楽しく走れることと、安全なことに尽きる。燃費命ではなく、あくまでも良いチューニングをすれば良い燃費が後から自然とついて来るというシンプルな捉え方である。では、具体的に車を運転していて楽しく感じる要素とは何か?

A:加速が楽しい。
加速が楽しくなる要素として排気音やエンジン音が重要な要素となってくるがハイブリッドの宿命として排気音は平均点以下である。せめてエンジン音だけでも気持ち良き音質に変えたい。エンジンオイルのベスト選択はZEROシリーズのZ30かZ40だった。単純な音質だけでなくエンジンの回り方の滑らかさが気持ちよい。
長い下り坂を長時間下ってゆくと、回生ブレーキによりバッテリー満タン状態になった際、充電が不要になるため回生ブレーキの電気を放棄する。特に、エンジンブレーキを効かすBセレクト時に、回生放棄が始まると、エンジン回転が4000〜4800rpm(状況による)と高回転で唸りをあげて急に回り出した時のエンジン音は同乗者も驚くほどすさまじい音。それまでの静かさから一変するので落差が激しく嫌悪をさえ覚えるほど。
この現象もZEROシリーズオイルであれば不快感が大幅に低減する。音質は優しくなり遠くで唸りを上げているが音質が一定でリズミカルだから許せる範囲に収まる。
ハイブリッドの加速はパワーモードに切り替え、アクセルを踏めば予想以上に気持良い加速が得られる。細かいことは今までの項目で詳しく解説した通りであるが、途中から新しくMVSが加わり、更に加速感は気持良さを増した。意外とインバーターやインバーターの冷却系装着でも効果が得られた。更に、アクセルを深く踏み込むスポーツ走行(この車には相応しくないが)をする際には、MVSを触媒、排気菅、マフラーに装着したり、インバーターやシリンダーヘッドなど、効果的に効く場所が沢山あることが検証できた。

B:ハンドル操作が楽しい。
納車時のノーマルから、タワーバーやトムス・ブレースバーなど色々と装着した詳細は、以前の項目を見直して頂きたい。それでも足回りやボディ剛性アップも途中から、新たにMVSをテストすることで日々進化を遂げてゆくのが手に取るように把握できた。サスペンションアームやショックアブソーバー、ホイール等に、MVSパワーシートを貼り付け、ボディには新開発のMVSパワーブロックを4箇所6箇所と増やしてテストを重ねていった。


そして得られた結果は「どんな仕様(純正のままのノーマル仕様でも、ブレースやロールケージ、車高調組み込みなどの改造車)でも、MVS効果が得られることが確認できた。
一番の問題点は、人それぞれに考え方や好みがあり価値観の違いや感覚の違いがあること。だからこそ「何が変わりますか?」ではなく実際に装着して探っていった結果、その車を運転するドライバーが「いいね」と満足できる結果が得られるかどうかを探ってゆくとに尽きる。
例えば、操縦性向上は好みが分かれる所だ。ハンドルを切った際の応答性がクイックなのが私の好みであるが、これをオーバーステアと勘違いする方も多く見受ける。反応が早いのとオーバーステアは、まったく異なる。また、ボディ補強や足回り強化による乗り心地悪化は多くの方が嫌う。MVS開発で解ったことは「相反する操縦性と乗り心地を高次元で両立することが可能になる」という点だ。今まで「ドシッ!」と突き上げていた段差を「トン」と軽くいなすように変化する。それでも、国産車の柔らかい足回りに慣れた方は少し操縦性を向上すると「硬すぎる」と嫌う方も多い。

操縦性を数字的に表すのは非常に難しいが「ノーマルで攻め込んだ際、横滑りを抑制するS−VSC作動灯が頻繁に点灯したが、ブレースやMVSパワーブロックを沢山装着した最終仕様のテストでは、ほとんど点灯しなくなった」
車側のコンピューターが「滑っていない」と判断した結果が全てを表していると判断できる。体感的には少し濡れた路面の逆バンクのコーナーに飛び込んだ際に恐怖心が湧かず何事も無く通過できるよになった。「タイヤが路面に押し付けられて粘着テープで貼りついているような感覚」と表現すれば解っていただけるだろうか。簡単に表現するとグリップ力が増したとなる。特に急カーブ前に設置されたゼブラゾーンで車が撥ねないで駆動力が素直に掛かるように変化した。
4輪駆動で操縦安定性を高めたクワトロから始まり、日産GT−Rや三菱エボ]と進化を遂げ4輪の駆動力まで統合制御する時代に突入している。その目的とは、操縦安定性の更に上をゆく操縦安全性の時代に突入したことを意味している。それは今まであればリヤが流れてカウンターステアが必要な状況を何事も無く通過できる次元と言える。これは、知らない道のコーナーに飛び込んだ際に、予想以上に深く鋭く曲がりこんだ状況下において、事故に繋がる不安定な挙動に襲われるか、ドキリと恐怖を抱くか、何事も無かったかのように駆けぬけるかの違いとなって現れてくる。
MVSを開発していくにつれて、マイプリウスの安定性が飛躍的に高まり走りの楽しさが倍増してゆくことが実感できた。

最後に・・・。
走りの楽しさは、どんなに頑張っても純粋なスポーツカーには到底及ばない。しかし、数十年前までは考えられなかった優れた燃費性能を考慮すれば現代の地球環境を抜きに語れない時代に於いて、大きなアドバンテージを持っていることは確かだと私は思う。実際に愛車として走り回って意外だったことは、重いバッテリーを後ろに積んだことで前後重量バランスの最適化に大きく寄与していて、路面に張り付いて走る感覚は大袈裟に例えると「ウイングカー」のような安定性を感じた。特に路面舗装が平坦で荒れていないS字コーナーを走る時の気持良さは格別であった。安全に楽しく、燃費良く、乗り心地良く、快適に走れる総合性能(全てを盛り込んだ最終仕様の評価)を見てゆくと、一つの選択肢と言える。
課題としては燃費に振りすぎたことによる急傾斜なフロントウインドウや左右に曲がる際の視界の悪さ、バックミラー形状(三角形)による後方視認性の悪さ、ブレーキの違和感などの欠点もあるが、マイナーチェンジなどで、少しでも改善されてゆくことを期待して私の新型プリウスの解説を終わりたい。

※忙しい業務の合い間を探し出し、文章を打ち込んでいる為、誤字・脱字等を後から読んで発見していたが、全体の意味合いが変わる訳ではないことをご理解いただきたい。また、この件に関して、お詫びすると共に長い間、付き合って頂いた方に心から感謝致します。
END