プリウスのブレーキシステムは普通の車と大きく異なっていることは「ブレーキ抜け」リコールの際に解説した。簡単に述べると「ブレーキを踏んだ時に違和感を感じる」と言う表現になる。この違和感を言葉で書くのは難しいがブレーキを掛ける時は「いつ、どこで、どの位の強さで」踏むとなるが、自分の予想した制動感覚と一致しないという表現になる。私はブレーキ抜けは経験しなかったが、バックやノロノロ運転の際に、軽くチョン踏みした時に、同乗者が思わず悲鳴を上げるほどのカックン(急制動)ブレーキを数えきれないほど経験してきたがディーラに改善の申し入れもしたが改善されなかった。それは現在も続いている。ゆっくりで常時発生するのではなく、横道からそろそろ出て右横から自転車や歩行者が急に出てきた時にチョコンと軽く踏んだつもりでも「ガツン」とショックを伴う急ブレーキとなってしまう。言い方は悪いが免許取立ての初心者ブレーキに近く神経を研ぎ澄ましてブレーキを踏んでも調整は効かない。丁度、新製品MVSの開発が始まっていたので当然ながら各種車両で開発実験に着手していた。そんな中で見た目はごく普通に見えるMVSパワーシートが完成したので、キャリパー塗装後に試してみることにした。

その結果は後で書くことにして本題であるキャリパー塗装について話を進めてゆく。トムス(ホイールの刻印を見ればTWSと打ってあり、レースなどでは使われるが一般の人には聞きなれない超高性能・高価格製品メーカーである)の超軽量鍛造ワンピースホイールに交換したため、当然の結果としてブレーキローターとキャリパーが丸見え状態となった。真っ赤なブレンボでディスクも大きければ見栄えが良いが、プリウスのフロントブレーキディスクは小さくキャリパーも小さくて貧弱なので、あまり目立つのはカッコ悪い。ブレーキローターもパッドが当る面はブレーキさえ掛ければ錆びは落ちて光る(当然ドラッグワン使用)ので問題は無いが、写真を見れば解るように外側とハブに近い内側が真っ赤に錆びてくる。ノーマルホイールであれば見えにくいので見逃してしまうだろうが丸見えなので何か対策を施したい。そこで耐熱のメタリックグレー色のスプレーを買ってきて塗装することにした。塗装前のキャリパーは白っぽいシルバーなので目立っていたが少し暗めのガンメタリックの耐熱塗料で塗装した後は、少し精悍な感じになり、錆びも目立たなくなったためスッキリした。

塗装が終われば、いよいよブレーキ対策の始まりである。納車されてからドラッグワン塗布やドラッグツー添加は真っ先に行っている。当然ながら納車直後のブレーキ違和感は若干ではあるが改善されているが元々の違和感が甚大であるために満足まではゆかない。タイミング良くMVSの試作品が完成したので試しにブレーキキャリパーに貼り付けてみた。写真では少し解りにくい目立たない位置にさりげなく貼り付ける。キャリパーの構造上、コの字形状でブレーキローターを挟み込み両側又は片側のピストンの力でパッドをローターに押し付け摩擦力で制動している。強い力が加わればコの字形状だから、口が開くように目に見えない変形を伴う。その結果、ローターを仔細に観察すればハブ中心に近い約10mmほどの当りは弱まり(当りが弱い分、色が違っていることも多い)磨耗したローターでは中心から遠い外側が余計に磨耗してくる。
写真のようなMVSパワーシート・1/2(ハーフ)をホイール側の上と下に1枚づつ貼り付ける。1枚1050円の品物なので前輪キャリパーで4枚4200円、後輪キャリパーに4枚貼っても、合計で8400円。ブレーキに関するチューニングアイテムで何かを改善しようとしたら軽く数万円を必要とする。D1にしてもD2にしても、今回のMVSパワーシートにしても全て1万円以下で試すことができる。安全確保の意味でブレーキの重要性が認識できれば事故を招く前の予防対策として幾ら手を打っておいても損はしないというのが私の考え方である。

さてその結果は、ディーラーに勤める方に私のプリウスに乗って頂いた際に真っ先に感想を述べた言葉は「ブレーキが全然違うね」だった。この言葉が全てを言い表している。一般走行でも高速走行でも、ブレーキは完璧とは言えないけれど、大分マシになった。ただ、最初に述べた、ゆっくり時の微妙なブレーキが必要な時に、カックンブレーキが突然、顔を出すのだす現象だけは残っている。こればかりはプリウスの特徴(設計)ですと捉えるしかあるまい。しかし、ほぼ満足できるブレーキに仕上がったのはMVSの貢献度が大きいと判断している。