4-7 ミシュラン・プレマシーLC装着
平成22年7月30日現在の走行距離は10800km。トムス鍛造ホイールにミシュラン・プレマシーLCを組み込んで、納車された純正タイヤと交換したのは、平成21年10月30日、走行距離は僅かに1425kmの時だった。3-1-6トムス鍛造ホイール装着の項目で最初の印象を記載したが、それから約9400kmも走行を重ねたことと、各種アイテムを装着して熟成を図ってきたために、装着直後の印象と、現在の印象は大幅に異なってきている。クルマのチューニングのおもしろさとは、何か効果的なアイテムを装着してクルマのポテンシャルや走りが変化すると、ブレーキやサスペンションや操縦性、タイヤまで幅広く影響を与えることである。それまでは問題もなく気にいっていた部分に急に不満を覚えたりする。そして、その不満を解決するべく知恵を絞って解決を図り、更なる熟成を図ることで成熟度は増し、自動車を運転する喜びは高まってゆく。
新車を購入された方であれば一度は経験されたことでしょうが、最初は新車特有の重さを感じる。それは出足ののっそり感であったり微妙なタッチの重さであったりする。走行距離が3000km、5000kmと増加し、6000kmを超える頃になると「何だか、最近はクルマが軽やかに転がるようになってきたかな?」と感じるように変化してくる。俗に言われる「当りが付いた」という表現である。新型プリウスも、この例に漏れず、6000km過ぎた頃から一段と軽やかさを増してきた。走行距離4100km時点で、電気式無断変速機のオイル交換と同時にX1FS300cc添加が効いて、回生ブレーキの効きが弱まって、アクセルを離してもクルマがスッ〜と氷の上を滑るかのごとく滑走してゆく。この感覚はエストレモ「極」「轟」を長年に渡って愛用してくださっている場合は理解できるでしょう。「エッ!! 回生ブレーキが壊れた!!」と錯覚するほど減速感が皆無になってしまった。また、燃費を気にせずアクセルを強く踏み込んでテスト走行を繰り返し行ってきた。エストレモX1は摩擦熱が上昇するほど反応が強くなるので、エンジンを元気よく回すような走行を行うほどミッションのギヤ当り面に荷重が掛かりX1が強く反応してくる。それにAZX1「極」グレードを試したのと、新製品開発アイテムが効果を発揮して今まで以上に鋭い加速を味わえるようになってきたのもミッション歯面のX1作用を促進させたように感じた。夢中でテストしていてフト気が付くとエンジン音が気持良く感じるように変化してきた。一言で表現すると「ハイブリッドを忘れさせる」と表現できる。大袈裟に聞こえるかもしれないが普通のスポーティ車のような乗り味になってきた。工場から出発する際に道路に乗り入れると同時に少し左にハンドルを切って加速した際に「キュッ!!」とタイヤがスリップ音を発して驚いた。それほど強くアクセルを踏んだつもりは無かったからだ。新アイテムをテストのために各部に盛り込んだ現在の仕様ではタイヤが完全に役不足となってしまった。

勿論、一般的な走行であればミシュラン・プレマシーLCは静かで乗り心地に優れ満足感が高い。当初、新型プリウスのファインチューニングを考えた際に、ここまで能力を導き出せるとは予想していなかった。多分、この文章を読んでも本気にしてくれないと思われるが、私の新型プリウスは、レカロのバケットシート、ニーレスト、ハイグリップタイヤ装着が相応しい仕様にまで煮詰まってしまった。相応しいタイヤ選定に頭を悩ます。今の所の候補として、評判が良いと聞くミシュラン・パイロットスポーツ3、ブリヂストンRE−11等。解ってきたことは車両重量が1400kgと重いのが欠点ではあるが、加速する際にモーターアシストは強力なのでタイムラグがないことと、リヤシート下側に重量のあるメインバッテリーを積載しているので前後の重量バランスに優れているためにヘアピンカーブでも破綻しない安定した操縦性を得られる。この安定した操縦性は各部に取り付けたボディ補強材やスタビライザーなどのセッティングバランスが絶妙に出来た恩恵も見逃せない。
ハイブリッドにも慣れてきたので私自身はあまり感じなくなってきているが、他人を乗せると「静かだね!」と驚く方が多い。また「スピード感が無いね」と繋がってゆく。これから電気自動車が多くなってくると「静か過ぎる」という問題に直面する。すでにハイブリッドの静か過ぎる問題は警告音を発する装置装着に法制化が進んでいる。いずれ電気自動車になると「静か過ぎる」=危険という方向で論議が湧き上がると私は予想している。その時に大事なのはコーナー入り口で「速度計を見て確認する」ことが重要となってくる。でも、レーシングカーはタコメーターは装着されていても速度計が装着されていないことが普通だ。ドライバーは感覚だけで、あの速い速度でコーナーに突入してゆく。その際に最も大事になるのは「確かな操縦性」となってくる。新型プリウスを1人で運転する際は、コーナー入り口で(見通しが良ければ)、ほとんどブレーキを踏まないでコーナーに入っていけるような車に仕上がった。だから曲がりこんでいるコーナーでも安定して駆け抜けることが出来る。知らない道で予想以上に曲がりこんでいて慌てた経験をお持ちの方も多いと思われるが、思ったよりもきついコーナーにオーバースピードで飛び込んでしまっても、車は挙動を乱さないで何事も無いようにスルリと抜けられる車が真の安全性の高い車だと私は考える。そんな理想的な車に仕上がった。
 これで操縦性優秀、加速優秀、燃費優秀、乗り心地優秀で運転が楽しい車に仕上がり、コーナーを攻めている時には、ハイブリッド車を忘れてしまうほどだ。急加速中も従来車と同じようなエンジン音で、ドライバーをその気にさせる。納車された最初の頃の走りの面白味の少ない車が「走っていて楽しい」車に変貌を遂げた。最後に一つだけ解消できない不満点はAピラー付近の左右の視界の悪さである。交差点での右折左折で歩行者や自転車の確認、特に雨天や夜間などの視界の悪い状況下になればなるほど気になってくる。これだけはグロスターをこまめに塗って対策しているが他に解決策は見つからない。