プリウスに限らないことだが、大衆車からいつの間にか水温計が無くなって小さな警告灯だけになってしまった。水温計が付いていても見る人は少なく信頼性も高くなり必要度が低下したのかコストダウンの影響なのか確かな答えは解らない。マーチを例に取るとエンジン始動で水色の小さなランプが点灯し適温になるとランプは消えてしまう。赤い警告灯が点灯した場合は冷却水不足など異常発生時であり気が付いても手遅れとなりかねない。プリウスは水温を示す表示は何もなくなっている。マーチと同様に、異常が発生した際は警告灯が点灯して教えてくれる。しかしながらメカニズムをある程度理解している場合は、何とも心もとない。水温計さえ付いていれば走行条件の違いによる水温の変化も手に取るように把握できるし、万が一のトラブルが発生したとしても早めに気がつくのでダメージが大きくなる前に対策が打てる。そこで水温計を取り付けたいと思う訳だが下手に装着するとトラブルの元を作ることに繋がる。時代は進歩して便利なグッズが販売されている。故障診断コネクターに接続するだけ(カプラー・オン)で水温のみでなく幾つかの表示を選択できる便利グッズとしてトラストの「タッチ定価:41790円(税込)、ブリッツのR−VIT(アールビット)」等が候補として挙げられる。

当初は新型プリウスの設定が無かったがようやく発売されたのでトラスト「タッチ」を購入。

詳しく知りたい方はメーカーHPで詳細を見て欲しい。私が一番知りたかった情報として水温と油温が挙げられるが油温はオプション部品を購入しないと表示できない。取り付けは簡単で故障診断コネクターにカプラーを接続するだけでプリウス対応品は電源を取る必要も無い。後は本体を見易い位置に固定する。そこでマジックテープを購入してきて固定。この方法であれば作業時間は短い上に場所の移動も簡単にできる。万一の車売却の際には5分もあれば取り外しが出来る。タッチの画面は縦でも横でも好みで向きを変えることもできるし、表示できる項目や表示画面も変更ができる。表示項目は車種により異なる。新型プリウスの表示項目はHPで見ると17項目に表示可能の○印が付いているが実際には全部は見られない。主な項目だけ記載すると、水温、エンジン回転数、車速、吸気温、点火時期、距離(999kmまでのトリップメーター)、バッテリー(電圧)などが挙げられる。装着後、最初に画面にタッチして使用する自動車メーカー名を選択する。TOYOTA1,TOYOTA2,TOYOTA3,TOYOTA CAN の4種類が表示されたので順番に選択してみたが、どれを選択しても正しく表示できない。困った末に購入店に問い合わせ入れるとトラスト営業マンに問い合わせしてくれた。結論は説明書にもHPにも記載されていなかったISO CAN を選択することで表示が出来た。この対応は少し不親切と感じた。別紙で良いからその旨を記載された小さな紙を同梱してくれれば良かったのだが・・・。
さて何を表示させようかと迷う。表示する画面も4種類の中から好みで選択できるし、表示方法もデジタル画面やアナログ画面など変更できる。また回転数や水温の最大値が表示されたり、回転数でも4000RPMをピーク値として設定しておくことでアラームで知ることが出来るなど、色々な便利機能が盛り込まれている。そこで縦画面で、上から回転数(デジタル表示)、バッテリー電圧、距離(トリップメーターとして)、水温の4種類を表示させた。回転数は4000RPMを越えたらアラームが鳴る設定。水温も83℃ピーク値として設定してみた。これで回転数が4000rpm,水温が83度を越えた場合にアラームで知らせてくれる。起動スイッチONで数秒後にエンジンが始動するので経過時間と温度上昇を測定してみた。その結果は・・・。

始動時=10℃
30秒後=16℃
45秒後=19℃
60秒後=23℃
75秒後=26℃
90秒後=28℃
105秒後=31℃
120秒後=33℃
135秒後=35℃
150秒後=37℃
165秒後=39℃
180秒後=41℃
195秒後=42℃
210秒後=44℃
225秒後=46℃
240秒後=48℃
255秒後=50℃
270秒後=51℃
通常は起動スイッチをONにした場合、Dにシフトする。Dのまま停止していると水温40℃に達するとエンジンは自動停止する。上記測定時はN(ニュートラル)のままで測定した。この状態ではエンジンは40℃を越えても停止しない。

水温が40℃に達する時間は当然ながら外気温に大きく左右される。外気温と水温の関係は始動前であれば大きくな差はなく違っても1℃から大きく違っても2℃ほどの差である。外気温13℃の時に水温が13℃でエンジン始動したときに40℃に水温が上昇してエンジン停止するまでの秒数は150秒であった。これが気温が20℃を越えると約60秒前後でエンジンが停止する。水温が40℃近辺から発進すると走行条件により左右されるが3〜5分後には85℃前後まで上昇する。勿論、アクセルをある程度踏んでいなければエンジンは停止してしまうことが多くなるし道路が下り坂であれば水温上昇は緩やかになる。私がテストで使用する道路は会社から出ると数分で急な上り坂を上るために水温上昇は早くなる。従って峠坂などを上る場面ではピーク値を83℃に設定しておいたためにすぐにアラームが鳴り出す。昔の車に較べて水温上昇が早いのは燃費を考慮した設計の賜物である。だから水温も少し高めで最大値が95℃と表示された。ちなみに最大エンジン回転数は5222rpmと表示された。

次に走行して駐車した場合、水温低下はどんな傾向を示すのか測定してみた。
測定日:H22年3月24日 外気温9℃
エンジン始動時=11℃
30秒後=17℃
60秒後=26℃
90秒後=31℃
105秒後=33℃
120秒後=35℃
135秒後=38℃
150秒後=40℃
エンジン停止
30秒後=38℃
60秒後=38℃
90秒後=38℃
120秒後=37℃
150秒後=37℃
180秒後=36℃
210秒後=36℃
240秒後=36℃

この結果から解ることは240秒後でも水温低下は僅か2℃であり予想していたよりは水温低下は少ない。赤信号等で停止した際にエンジンが停止したとしても、それほど大きな影響は出てこないと推定できる。今度は走行後、長時間駐車した場合いの水温低下を測定してみた。
外気温3℃と低い状況下。
駐車(エンジン停止時=水温60℃)
30分後=46℃
77分後=31℃

ハイブリッドを選択する大きな理由として高燃費は欠かせない。燃費を大きく左右する要因は沢山あるが、水温も重要な要因のひとつである。会社から1周23.6kmを定期的に走行して燃費測定を行っているが、エンジンが冷えた状態と温まった状態で、どのような変化を示すのかを測定してみた。
その結果は以下の通り。
2010年1月14日
第1回目試験の結果(タッチ装備前:水温不明)
1周目:ノーマルモード:平均燃費が22.4km/リットル(平均速度36km/h)
2周目(エンジンが暖まった状態)PWRモード×スロットルコントロラーを最強のSP3での走行。意外や平均燃費27km/リッター(平均速度41km/h)という結果が出た。平均速度が5km/hも上がっているのにも関わらず4.6km/リットルと大幅な燃費向上という結果となった。

2010年5月2日
第2回目試験の結果(タッチ取り付け後、水温データー有り)
今回は条件をできるだけ揃えることに考慮した。
エアコンON25℃設定、POWERモード(スロコンOFF)、バッテリー残量6目盛
1周目:外気温18℃ 水温16℃ 起動スイッチON=エンジン始動して60秒後(水温32℃)に走行開始。平均燃費23.2km/リットル 平均速度36km/h 赤信号などのストップ回数11回。祭日で道路は比較的空いていた。
2周目:会社駐車場に戻り数値を記録後直ちに発進。
外気温19℃ 水温80℃
燃費27.5km/リットル 平均速度37km/h バッテリー残量7目盛 
ストップ回数13回

1回目の走行開始水温32℃に対して2回目走行開始水温80℃と水温差が48℃異なる。前回はモードが異なっているにも関わらずエンジンが暖まった2周目は4.6km/リットル燃費が向上したが、今回は同じモードで4.3km/リットルと第1回目試験と、ほぼ近い数値を記録した。2回ともMAX水温は連続する登坂時に91℃まで達した。2回目走行での水温は絶えず80℃以上を保っていた。
発進すると途中で何回か小さな上り下りはあるものの全体的には下ってゆく道路状況である。5.7km走行した時点で曲りくねった坂道を登り11.1km走行地点の二箇所に信号が有り、たいてい赤信号に引っ掛かり停止するので、データーを区間ごとに記録した。そのポイントを比較すると燃費の差が更に大きく寒冷時と暖機終了後との違いが浮き彫りとなってくる。
1回目5.7km:水温=59℃ 燃費=22.1km/l 平均速度=30km/h
2回目5.7km: 水温=81℃ 燃費=45.3km/l 平均速度=35km/h

1回目11.1km:水温=78℃ 燃費=19.1km/l 平均速度=36km/h
2回目11.1km:水温=未  燃費=27.0km/l 平均速度=39km/h

H22年1月より5月まで同じ道路で11回のテストを実施してきている。多少の条件の違いはあるものの、冷間発進5回と暖機後発進5回の平均燃費を計算した。
冷間時発進 5回の平均燃費=22.62km/リットル
完全暖機発進 5回の平均燃費=26.14km/リットル
 燃費の差=3.52km/リットル

私のデーターは法定速度が表示されている一般道路であるが遅い車に追いついたり、逆に後ろから速いペースの車が追尾したり、赤信号や渋滞で停止回数が変わるなど諸条件は変化する。しかしながら1回だけの試験ではなく何十回も繰り返し行うことで平均速度は遅い時で35km/h,速い時で41km/hの範囲に収まっている。また1回目と2回目は数分間(データー記録時間)停止したのみで連続して行っているため条件の違いは最小限に抑えている。むしろプリウスの場合は、バッテリー残量や運転方法の違いが燃費に大きく影響を及ぼす。繰り返しテスト結果に明らかな違いが出たのが冷間時と完全に各部が温まった温間時での燃費の差であった。約4kmの燃費差が出る一番の要因は、暖機で燃料を多く使用することと、暖機により水温と油温が適温になるため要求燃料も減少し燃焼状態も良好になり、エンジンオイルも暖まって抵抗が減少されたことなどが考えられる。またミッションオイルも温まり駆動抵抗が減少、タイヤも温まって空気圧が少し上昇し転がり抵抗も減少するなど、総合的に様々な要因が積み重なったことで燃費に反映されていると推定できる。
この結果は暖機されたエンジン(駆動関係やタイヤなど総合的に)が燃費的に有利であることを改めて証明した結果となった。冬季の燃費が悪化するのも短距離の通勤などで燃費悪化を招く要因もこのテスト結果が明確に裏付けている。23.6km走行で、これだけの差が出る訳だから片道10km以下の通勤や買い物など(いわゆるチョイ乗り)では好燃費は期待できない。この結果から、これからのレシプロエンジンの燃費改善策が見えてくる。屋外駐車であればソーラー発電などでエンジンオイルを電熱で事前に暖めておくことで燃費を稼ぐことが出来るだろう。でも燃料電池車や電気自動車に大きくシフトしようとしている時代ではそんな開発は夢物語で終わりそうな気がするのだが・・・。

最後に「タッチ」で点火時期とスロットル開度(%)も測定してみた。2kmほどの短時間でゆっくりな走行で、点火時期=最大値35度 スロットル開度=最大値33% であった。皆様も関心が高い燃費であるが、朝晩の工場からの車の出し入れ、お客様を乗せた試運転では会社から出ると直ぐに急な上り坂で2〜6kmの短距離を回って戻ってくる燃費にとって最悪な条件。こんな背景でありながら、6589km走行時点での満タン法による平均燃費は 18.2km/リットル。この値を低いと見るか優秀と見るかは意見は大きく分かれるところであろう。私の考えはコロナクラスの車格、高級車に近い乗り心地(タイヤ&軽量ホイール交換、デッドニング効果もプラスに作用している)、結構過激なテスト走行を幾度となく繰り返しているので満足できる燃費と思っている。走行距離が増えるほどに転がり感が滑らかになりアクセルを離した際の車速低下が少なくなってきていることが確実に実感できる。この車で燃費走行に徹したら高燃費が期待できるが私の場合は価値観の違いがあり「走りの追求、気持良き走り」なので無理な相談となる。