3-1-9 フロント・ストラットタワーバー取り付け
3-1-10 下回り補強バー取り付け
と目次は分かれているが関連する項目なので同時に掲載する。

走りを楽しむスポーツカーならば必須項目であろうボディ補強&足回り改善など、燃費重視のプリウスなどには「猫に小判」で不必要と捉える方が一般的傾向ではなかろうか。私はあえて走りの楽しさを追及してみた。その理由は一般的な知識の方々には理解が難しいことだが私は「操縦安定性」=「安全性向上」という考え方を持っているからだ。交通安全教室でも「スピードは控えめに」と奨励している。例えば初めて走行する知らない山道をドライブした際に、自分の予測よりもコーナーが鋭く深く回りこんでいて車の挙動が不安定になったという体験をされた方は多いと思われる。そんな時に、何事も無かったようにスルリと曲がれるか、挙動が不安定になるかの違いは、言い換えると「事故しそうだった」が「何も危険を感じなかった」と実に大きな差が出てくる。エアーバックは事故に逢った際の安全策であり、事故を回避できる操縦性、安定性こそが車好きにとって重要な点であることにハイブリッド車であっても何等変わりはない。ボディ補強は「おまじないのような貼り付けるグッズ」は私のテストでは何の違いも感じなかった。ボディ補強は有名メーカーでなくても適切な場所に強度を持つ補強バーをきちんと取り付けることさえ出来れば大きな効果を得られる。難解な理論など不必要である。自分で知識が不足していたとしても各種チューニングショップから沢山の補強パーツが発売されている。予算と自分の技術レベルに合わせ、どこのメーカーの物をどこに付けるかで決まってくる。少しでも、このサイトを見に来てくれる人達のために、全部を一度に取り付けるのではなく、自動車メーカーやレーシングカーを煮詰めてゆくと同じ手法で、1箇所装着しては私と社員でテスト走行を繰り返し、変化とバランスを確認していった。 

ステップ1:Fストラットタワーバー 定価16000円

ボディ剛性を強める定番アイテムと言えばストラットタワーバー。名前が売れているとかは関係なく、どれだけ強度が強く出来ているか?強度を備えて重さはできるだけ軽い方が良い。バーが直線的になればなるほどハンドルがシビアになるなど人によっては好みではないことも出てくる。プリウスの場合は構造上、左右に曲がり部分がある。この曲がり部分があると、この曲がり部分でしなるので少し反応が鈍くなることが考えられるがクッションと思えば良い方向に作用することも出てくる。私が選んだのはTO-BOX製。定価16000円と買い安い価格の割りに良く出来ているので皆様にお勧めする。取り付けは新型プリウスの場合少し面倒で、大きなカバー2枚とワイパーモーターを取り外さなければならない。作業時間は約1時間30分。取り付け後、すぐに感じたのは交差点で遅い速度で曲がってもハンドルを切ったときにレスポンス良く車が曲がる。いやいや曲がるのではなく素直に車が向きを変える。一般的なドライバーであってもフロント・タワーバー装着は極めて有効である。たった1本のバーで気持ち良き走りが得られる。予算の少ない方、それほどコーナーを攻めない方や燃費指向の方々にも勧めたい。タワーバーを装着することでエコカーでも運転が楽しくなる。
操縦性の変化を言葉だけで伝えることは非常に難しいので評価点で表すと・・
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は60点

ステップ2:フロアーサポートバー(後)購入価格7140円
純正でボディ下側の中央付近に左右を連結する帯状の補強バーが取り付けられている。この純正バーを取り外し、強度を増した補強バーを装着することにした。トムスやクスコから発売されている補強バーは大きくて頑丈に出来ている分、高価になり重量的に重くなる。また、一般走行では、そこまで頑丈にすると乗り心地にも影響が大きく荒れた路面での乗り心地を損なう恐れも出てくる。そこで私が選んだのは「スーパープライベート」から発売されている1本タイプ。装着後の素直な感想は、タワーバー装着ほど劇的な変化は感じられなかったが、装着により安定感は確かに増していた。(ステップ4で劇的に変化した)これだけのボディ補強は大きく変化しないので「本当にボディ補強など効果があるの?」と思ってしまっても不思議ではない。デッドニングやボディ補強は中途半端に行ってもあまり恩恵を実感しにくい。やる時は「やって良かった」と実感できるまで実施することが最大のポイント。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は65点

ステップ3:タナベフロントロアアームバー購入価格6001円(オークション)

フロント側の補強バーもトムスやクスコから頑丈なタイプが発売されている。新型プリウスは燃費向上対策として、アンダーカバーで広く覆われているので、カバーとどこまで干渉するのかが不明であった。また一般道路でどこまで補強するのか必要性が不明である。そこで、まず価格的に安い1本パイプで出来ている「タナベ」の補強バーをオークションで購入し装着してみた。これである程度前後のバランスが取れ、安定したコーナリングが楽しめるようになってきたが見た目の強度と同等で、劇的に変化するほどではなかった。どうせ装着するのであれば梯子形状(台形)のトムス製を試す他はあるまい。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は70点

ステップ4:純正後部補強バー加工+フロアーサポートバー2本装着 

かなり完成度が高まってきたので次のステップアップを色々と考えていた。費用も安くて簡単にできる方法がある時「パッと」閃いた。「スーパープライベート」のフロアーサポートバーは装着する時に純正と付け替えるタイプである。その理由は、純正のバーは強度を増すために板の両端を90度曲げて強度を高めてあるので取り付け部分付近が純正補強バーと干渉してしまうため取り外さなければならない。閃きとは、この純正補強バーと後付けのサポートバーのダブル装着で更なる強度アップが図れるというアイデアが浮かんだ。そこで弊社のすぐ隣にあるショップ「オートメカドック・ハーディ」さんの社長に依頼し、純正品の取り付け部付近を溶接バーナーで炙って叩いて平らに加工して頂いた。これで干渉しなくなったので純正品と補強バーを同時にダブルで装着できるようになった。取り付けボルトの長さが純正のままでも、板厚が1枚から2枚に増えただけなので強度的に何の問題も起きない。フロアーサポートバー単体装着と、今回のダブル装着の両方で比較走行を行ったが、ダブル装着の方が明らかにボディ剛性が向上している。装着前の予想を遥かに上回る結果となった。最高の前後バランスとなり見違えるように安定して狙い通りのラインに車が向く。これは楽しい。ここまで良くなると人間、更に欲が出てしまう。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は80点

ステップ5:トムス F 補強ブレース 定価23100円

これから改造を行う皆様の参考になるように自動車メーカーの開発に近いステップアップを行ってきたので、これから改造を検討されている皆様の参考にできると思う。一度にドンと装着して良い結果がえられたとしても次の車に生かせない。前後のバランスを見ながら全体的な完成度を高めることがノウハウとなって蓄積されてゆく。ステップ4でも、かなり楽しめるバランスの取れた安定した走りが得られたが更に上を狙ってみる。1400kgと車両重量も重くコーナーリング中に重さが影響してしまい、速度が増すほどローリングが(横揺れ)が大きく感じてしまうので、もう少し抑制させたいところだ。純正のサスペンションは乗り心地に優れ良い部類に入るし純正の車高も意外と低いので、車高が下がるサスペンション変更はしたくなかった。またボディ補強をすればするほど、ボディ剛性が高まってゆくとサスペンションを固めた事と同じような効果が出てくる。ボディが歪むことで入力された衝撃をいなすサスペンションと同じ役割をしていることが実感できる。私の考え方として「ボディはできるだけ剛性を高め、サスペンションは柔らかく」というスタンス。だから簡単に車高調などに交換しない。タナベのフロント補強バーは安くて軽量であるが、トムス製の梯子状の2本タイプ(台形)に交換し更なる剛性アップを図ってみた。結果は予想外で、ハンドルが重くなり応答性が悪化した。どうしてそうなるのかの理論的な理屈はまだ解っていない。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は80点のまま変わらず

ステップ6:トムス F 補強ブレース左右 定価16800円

実はトムスのフロント補強バーには2種類が用意されている。文章で説明するのは少し難しいが、長さ20センチほどの丸パイプを2箇所に取り付けることでハンドルの応答性を高めるための補強バーである。こんな補強バーが設定されていることから推定すると、やはりフロント補強ブレースとセット交換でバランスが取れることを把握した結果であろう。そこで、このバーを左右に装着してみた。すると重くなってしまったハンドルの重さが元の重さに戻った。どうしてそうなるのかハッキリした理屈は、この時点では解らない。多分、タイヤ接地面に影響を与えているのだろう。操舵中のキャスターや対地キャンバー角が微妙に変化したのかもしれない。この仕様でかなり前後バランスは良くなり速度を出しても安定してコーナーを回れるし安心感、安定感がかなり向上してきた。ただし、後輪の接地性が強く感じるので、もう少し後輪が流れてくれた方がおもしろいかなと感じた。もっともFR方式ではなくフロントに重いエンジンとモーター&ミッションを搭載、リヤにも重いメインバッテリー、補助バッテリー、スペアータイヤ(購入時にパンク修理キットに変更可能)搭載と、重量的なものとFF方式が関係しているため、FR方式と同じフィーリングにはならない。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は85点

ステップ7:クスコリヤスタビ取り付け 定価:26250円

ステップ5で述べたように、ローリングを抑える最後の仕上げとしてクスコから発売されているリヤスタビライザーを装着してみることにした。両後輪を連結するビームが実際はリヤスタビの役割りも受け持つのだが車重を受け止めるほどの安心感は得られなかったことが装着した理由のひとつ。スタビライザーの役目はボディの傾きを抑するが乗り心地には大きな影響を与えない。また、速く走るレーシングカーやスポーツカーに必ず装着されるアイテムである。装着は20分で完了。早速テスト走行してみると、コーナリング中に後輪が路面にピタッと吸い付くようになった。ボディ後端が上方から強い力で路面に押し付けられているような感覚。結果的に、安心感・安定感は増したが、その反面、ハンドルの応答性が少し鈍ってしまった。要はフロント側とリヤ側のバランスが崩れたのだ。コーナーは安定して曲がり後ろもピタッと吸い付いて車がクルッと曲がるが、バランス的に後側が少し勝ってしまっている。これは予想通りと言えば予想通りの結果であるが・・・。フロントスタビと両方装着で最大の効果が発揮される事はリヤスタビ装着前から承知していた。当たり前のことであるが何事も試して確認しておかないと技術屋としては失格。次に何か問題が発生した時に解決する引き出しの数が増えるからだ。何でも先ずは自分で試してみてから次ぎに進むのが藤澤流とも言えよう。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は80点に下がる

ステップ8:クスコFスタビ交換19.7mm中空=25中実 純正比127% 定価:26250円
やっぱりボディ補強と同じように、スタビライザーも前後のバランスが重要。そこでクスコのフロントスタビライザーに交換した。純正が19.7mmでパイプ(中空と表現する)からクスコ製は25mm丸棒タイプ(中実と表現する)で手で持ちくらべてみると、大袈裟ではなく約2倍はあると感じるほど、ずっしりと重い。捻り剛性を純正と比較すると127%で27%アップ。交換は少し面倒で、左側のサスペンションアームを取り外さないとスタビライザーが抜き取れない。気になる結果は「大正解」でハンドル応答性はクイックになり前後のバランスも高い次元で良くなった。例えて言えばノーマル仕様で50km/Hが限界と思えるコーナーを難なく70km/Hで破綻せず難なく回れると表現したら伝わるだるうか。S字コーナーでも姿勢変化は少なくボディの重さをあまり感じないので思い通りのラインが狙える。もうこれで90点は付けられる。
ステップ8はバランスに優れ、完成度は高い。もっとも、ここまでレベルが高まると新たな問題も出てくる。今回チョイスした、ミシュランLCは燃費や快適性に関して優れたタイヤであるが、1400kgもある重い車体でスポーツ走行するには少し荷が重くなってくる。もう少しグリップ力が高めのセミスポーツタイヤがよりマッチングする仕様となってきた。ブレーキパッドも踏力の応じた効き味を発揮するセミスポーツパッドが欲しくなってしまった。また、ステップ6の仕様で腕のある方に乗っていただいたら「シートもGTLの本皮シートではホールド性が役不足となりセミバケットシートと右足ニーレストが欲しくなるね」と言ってきた。右膝の当るドア部分が大きく凹んでいるので、アクセル操作をしている右足が不安定になるため膝当てが欲しいということである。実はそこまで走りのポテンシャルが向上するとは予想していなかったので嬉しい誤算でもある。
私がよく解説する「車はバランスを重視する」というポイントはボディ剛性でも外せないポイントであると、痛切に感じられた。そういう意味では、一度に装着しないで面倒でも「装着してはテスト走行」を繰り返し熟成を計ってきた今回の開発テストは私にとってもとても参考になったし、皆様も無駄な出費を避けることができると思われるので、ぜひ参考にして頂けたら幸いである。但し、費用対効果や操縦性は感覚的な問題であるので私の評価との違いが出てくることがあるかもしれない。
評価点:純正仕様を仮に50点とした場合=評価点は90点



気になる重量は
フロントストラット・タワーバー(TO-BOX製):2.2kg
フロアーサポートバー(スーパープライベート製):710g
フロントロアアームバー(タナベ製):326g
フロント補強ブレース:台形(トムス製)未測定:推定4kg
フロント補強ブレース左右(トムス製)未測定:推定2kg
リヤスタビライザー(クスコ製):未測定:推定3kg
フロントスタビライザー(クスコ製):未測定:純正品2.8kgとの差:推定3kg
トータル重量増:推定で約15kg
燃費至上主義の方であれば15kgの重量増は拒否反応を示す値であろう。しかし、操縦安定性は安全運転に大きく貢献し運転も楽しくなる。その価値観は個々で大きく異なってくるため装着の判断は自己責任でお願いします。いつも決まった一周23.6kmコースで燃費測定を複数回実施しているが現時点では大きな燃費低下として表れてきていない。

最後に、ステップ8までの仕様が完成度が高いのは確かなことだが、そこまでの操縦安定性を必要としない方も多いと思われる。そこで予算的に安くて効果的な方法としては・・・
ステップ1:Fストラットタワーバー(TO-BOX製:2.2kg)と、ステップ4:純正後部補強バー加工+フロアーサポートバー(スーパープライベート:710g)2本装着を推奨する。工賃と加工代金は別にして部品購入価格は約25000円、重量増は3kg以内に収まるため満足感は高い。