3-1-8 電気式無段変速機フルード交換+X1FS添加
新型プリウスの大きな特徴として遊星歯車を使用した電気式無段変速機が挙げられパーツカタログにはCVFCと記載されている。技術屋としては構造・作用に注目してしまう。実物を目の前に置いて分解したり内部を観察することが出来れば構造・作用も理解しやすいのであるが実際はなかなかそんなチャンスは訪れない。雑誌掲載の断面図やカタログなどから動作を推定したり、ネットで色々と検索することになる。パーツカタログで見ようとしたが周辺のパーツ番号が記載されているのみで内部部品は購入できなくてアッセンブリーでの交換となるようだ。プリウスのカタログに掲載されている写真からは大きな歯車(リングギヤ)の内側に5個の小さな遊星歯車が噛み合っていることが解る。ネット検索で見ることができた断面図を眺めていると複雑な作用が少しずつ見えてくる。このHPではその構造や作用を伝えることが目的ではなく「estremoX1&X1FSを無段変速機に添加することによって、どのように変化しどんなメリットが得られるのか?」が技術屋として一番興味深い。

断面図を観察して解ることは中央のサンギヤに複数の遊星歯車が噛み合っている。遊星歯車は外周のリングギヤとも噛み合っている。これらの歯車は歯が斜めに切られている「はずば歯車」と呼ばれる歯車。この「はすば歯車」の特徴は歯が横に切られている「平歯車」よりも、静かで強度も強い。歯に力が掛かるとスラスト方向(軸方向)に力が掛かるため側面の磨耗を防ぐ潤滑及び設計が重要となってくる。「はすば歯車」が使用されている、通常のミッションギヤでも多量の切粉が発生しているのでオイル無交換と聞くとクルマ好きであれば気色悪い感じがしてしまう。ディラーに依頼してミッションオイル交換はできる訳であるが、それでは抜き取ったオイルの切粉の状態をじっくり検証することが難しくなってしまう。そこでestremoX1FSを添加する前に純正オイルを抜き取り、X1FS:300ccを先に添加してから新品純正オイルを入れることにした。指定オイルを使用しないと万一のトラブルでの保証に影響が出てくる恐れもある。また指定純正オイルを確認してみると、ごく普通の「トヨタ純正オートフルード WS」と取扱書に記載されている。容量は3.4リットル。最近はミッションにも柔らか目の粘度が盛んに指定される傾向を示すが、ここにも少しでも燃費を向上させたいという意識が見え隠れしている。20万km,30万kmを目標として耐久性を考慮するのであれば無交換ではなく、定期的なオイル交換によって少しでも寿命延長を図ろうとするのが人情であろう。更に上を目指す方であれば効果的で信頼できるオイル添加剤の活用は避けて通れない選択肢となってくる。当社工場にオイル交換に訪れた方であれば解ることであるが古いオイルを抜き取って観察すると、汚れ具合、切粉の発生状況、匂いなどが良いオイルと悪いオイル、X1&X1FS添加の有無で大きく違ってくることが実感できる。特にデフ(LSD含む)やマニュアルミッションなど、ギヤ関係に添加した際の、大きな切粉の発生は皆無に近くなり、モリブデンとそっくりなミクロの微粒子がドレーンプラグに少量付着する。この現象で解ることは磨耗量が何倍も減少することが見て取れる。一般的にはエンジンは馴らし運転を終了したらオイル交換を実施する方は現在でも多い。でも、デフやマニュアルミッションこそ、馴らしをしたら早めにオイル交換を実施して発生した切粉を外に排出したいとクルマ好きなら考える。新車から何km走行後に実施すべきかが一番悩む所である。デフを例に挙げると、走行1000kmで来社され交換しても、かなりの切粉が発生している。それから推定すると3000〜5000kmが適正な距離かななどと個人的には考える。但し、新しい機構と未知なる作用なので、どれだけ厳しい状況で、どれだけ負担が掛かり切粉が発生しているかは未知数。だからこそ一度交換して、じっくり観察してみることで今後のメンテナンス計画が構築しやすくなる。不安と期待が交差する中で、まずは綺麗な受け皿を用意し、ミッションオイルを抜き取る。4100kmと少ない走行距離なので新品同様の綺麗なピンク色のATFが受け皿に出てきた。しばらく放置してから上側のオイルから廃油缶に捨てて行き、沈殿した切粉の状態と観察した。かなり、うっすらと細かいメタルパウダー状の切粉は発生しているが予想よりも少ない発生量と安心できた。社員と共に「このくらいは、どうしても初期は出るんだねと確認して・・・」すると「ギョギョギョ!!」何だか定かではないが少し大きな砂のような異物が見て取れる。(写真参照)明らかに切粉とは見えないので一瞬、目を疑ってしまった。詳しく観察すると大きな方は黒色で指で触ってみると固い。小さい方は乳白色で同様に固い。そこで金属棒で強く押しつけてつぶしてみたら両方共に、砂状にくだけた。あくまで推定であるが製造時に混入したと考えるのが妥当である。外から混入する侵入路など考えにくい。この謎は謎のまま理由は永久に解らないだろうと少し落ち込んだ気持を振り払ってX1FS300ccを先に添加。電話の質問で「X1を添加する際に、その分を減らすのですか?」と質問が寄せられるが、容量が解っている場合は先に計算しておき古いオイルを抜き取ったら先に入れてしまえば減らすとか、こぼしたり等の添加失敗のトラブルは避けられる。後から規定量まで(通常は車両を水平に保ち注入口から、あふれ出てくれば規定量となる。)新油を入れて終了となる。注入口からあふれてきたら高価なX1もこぼれてもったいないと思われる方も居るでしょうが心配無用。それはオイルの比重は0.80〜0.89程度なので水の比重1.00より軽ので水面に浮く。ところがX1&X1FSの比重は約1.04と重いのでオイルの下側に沈みこむためこぼれてこない。こう説明すると「それではオイルと混ざらないのではないか?」とすぐに心配する方も出てくる。エンジンでもミッションでもデフでも、自動車の機構の中はギヤやクランクシャフトなどが高速回転する部品がたくさんある。だからオイルはカクテルを作るためのシェイク状態よりも、何十倍も何百倍も激しくかき混ぜられている。よく店頭で手で回転させ、絡みつき状態を見るようなデモ機とは較べようもない過酷な状態と知るべきだ。また、X1は粒子でもなければ微粒子でもなく、オイルと何等変わらない液体なので、短時間で混ざってしまう。(専門的な表現では分散と呼び、添加されたほとんどの成分(約99%以上)はオイル中に混ざっていて潤滑面に運ばれた物だけが圧力や摩擦熱に反応することを繰り返し作用し微量だが消耗し劣化してゆく)
X1FS300cc添加後に、新品のトヨタ純正オートフルード WSをあふれ出るまで注いで終了。
さて、気になる変化は出てくるのか?早速試運転に出掛ける。結果を先に書くと「凄く効いた!効果絶大」である。新型プリウス乗りであれば、エコ運転の方、耐久性を伸ばしたい方、走りを楽しみたい方、気持ちよく運転したい方など誰でも効果を実感できると思われる。まず一番感じる場面は、アクセルを踏んで加速後にアクセルを離したり緩めたりした時。プリウスはアクセルを離した瞬間から回生ブレーキが働くため、グッグッと急激に速度が低下してしまうため一定速度を保つのに微妙なアクセルワークを要求される。踏みすぎてしまうとエンジンが始動してしまうし、それを避けようと少しだけ踏み込もうとするとガクッと速度が落ちてしまうのでアクセルワークに神経を使う。それがアクセルを離しても明らかにス〜ッと軽ろやかに進んでゆくので「アレッ!!回生ブレーキが効いていないのでは?」と一瞬疑ってしまうほど減速感が消えた。ハイブリッドインジケーター画面で確認してみても、しっかり回生ブレーキは働いている。また、アクセルを踏んだ直後も加速フィーリングが明らかにスムーズで滑らかになっている。丁度、当社の「轟」バージョンのエンジンオイルを使用したり、デフに「紅」を使用したりしてフリクションや転がり抵抗が極端に減少すると「クルマが勝手に前に進む」「クルマが競走馬のごとく行きたがっている」と表現されると同様な走りへと変化を遂げた。そこから推測できることは「それなりに大きなフリクションが存在している」という事実が確認できた。
この過大なフリクション低減は
○加速向上
○レスポンス向上
○耐久性向上
○燃費向上
など大きなメリットが生まれると共に、車両重量を軽減したかのような気持良さにも貢献してくる。但し、運転方法にもよるが、ひとつだけ注意することがある。速度が高まれば高まるほどエンジンブレーキが効かないのと同様に、アクセルを離した途端に、それまでアクセルで抑えこまれていた制御が外されるため、一瞬であるけれどクルマが少しだけ加速する。この現象を怖いと感じるか快感と感じるか評価が分かれるところ。弊社製品の愛用者であれば「快感」という表現が伝わり易いと思われる。本当は理想的な状況下でなければ体感できない現象だから。でもプリウスのリコールのブレーキ抜けと同様に運転者が意図しない動きをクルマが起こすと恐怖に慄く方も存在する。その場合はX1FSではなくX1にして、添加量を250ccに落とせば済むことである。
また、X1&X1FSメタルリペアは走行距離が増大すると共に摩擦熱を利用して進行し更なるフリクション低減効果が少しずつ高まってくると予想できる。回生ブレーキが作用しても車速低下が少ないことから燃費向上にも貢献していると思われるが、それだけ走りを楽しんでいる現在の状況では燃費向上は語れない。また、プリウスは燃費の変化する要素が普通の車より数倍も多いので長期間の燃費データーを集積してゆくことで、いずれ明らかになると考えている。
地元の地名ばかりで恐縮だが、会社から出発して小田原方面に向かい(緩い下りが続く)、途中から小さな峠を越えて中井町に抜け、中井町から東名高速方面に向け上ってくる(緩い上りが続く)最後に上りがきつい曲りくねった道を上り、また曲りくねった道を少し下ってノジマ大井松田店の交差点でR255に合流して会社に戻ってくる23.6kmの同じコースを実走行して燃費を取っている。自分の運転方法は急に大きく変化するものではない。でも、赤信号に引っ掛かる回数や遅い車が前を走行していたり道路状況は様々に変化する。だから1回の燃費ではなく、できるだけ回数を多く走行することで平均値が出てくる。これを納車途中からではあるがづっと繰り返している。まだ発表する段階ではないがデーターが増えてきたら公表したいと思っている。大きな理由は新車時の走りから日々変化を遂げてきているし、走れば走るほどまだまだ自然と変化を遂げている途中経過だから。
無段変速機にX1FSを添加したから約2000km走行した。内部のメタルリペアが進行してきたようで更に滑らかさが増してきている。駆動系のフリクョンが減少すればするほど停止する際に「ブレーキの効き」が甘く感じるようになってくる。但し、プリウスは時速60km以下でのブレーキは充分に効き、特に時速40km以下の低速走行では効き過ぎる感じだ。ブレーキリコール対策後は特に油圧ブレーキが強く効いている。ところが速度上昇に伴い時速80kmを越え、速度が増せば増すほどブレーキを踏んでも減速感が低下してゆきブレーキを踏みこんでいる強さの割合に対し減速してくれない。重い1400kgの車両重量と、ミッションやモーターの回転部分の質量の重さがそのままフライホイールと同様な慣性力として作用しているような感覚が伝わってくる。この感覚は時によっては「怖い」と感じてしまう。本当はこのような状態を感じることが出来ることは無駄な抵抗を減少させ潜在能力を充分に引き出したことの証でもあるが。最初にプリウスに乗った時にはブレーキチューニングなど必要ない車だと思っていた。それがここまで進化を遂げてくるとestremoD2を100cc添加+estremoD1施工に関わらず「低速では純正より効きが弱く、高速でガッチリと減速してくれるブレーキパッド」が欲しくなってきた。さて、トムス、エンドレス、プロジェクトミュー、どこのパッドに交換するか悩みは尽きない。