3-1-6 トムス・鍛造ホイール交換
自動車の外観を自分好みに大きく変更する場合、二つの方法が思い浮かぶ。ひとつは、バンパー交換や後付けのエアロパーツを装着する方法である。販売台数が多い新型プリウスも、沢山のメーカーから様々なデザインのエアロパーツが製作・販売されている。おもしろい現象として外観にこだわる人の多くは「見た目だけ」に資金や精力を注ぎ込むような傾向を強く感じる。その反面、肝心な走りの貢献度の高い部品やメンテナンスには限られた予算の枠の中で、なかなか回せなくて疎かになってしまう傾向に見て取れる。走りの向上には興味を抱かないのか、または視野に入っていないのかもしれない。但し、愛車をどのように料理するかは個人の自由であり、あまり深く追求してもいけないが。二つ目の方法は、ホイール(タイヤ)を交換する手軽で手っ取り早いモデファイである。この方法の利点は、いつでも資金さえあれば変更ができることと、ホイール&タイヤ交換によって、走りの性能や静粛性、燃費など好みの方向に同時にモデファイ出来ることだ。車種によってはデザイン性に優れたホイールが標準で装着されてくることもあるが多くの場合「何だかインパクトに欠ける」「好みのデザインではないな」と不満を抱くことになる。ホイール交換は、多くの場合、下記の3条件を重視して決定される。
1:価格(できるだけ安い物)
2:デザイン(自分の希望上限価格の中で一番好きなデザイン)
3:軽さ(純正よりできるだけ軽い物でバネ下重量低減)
同時にホイール&タイヤの内径サイズ変更(インチアップ&ダウン)が併せて行われ、タイヤ銘柄も変更されることが大半である。今回の新型プリウスも例外ではなく、純正ホイールのデザインは平凡であり、あまり好みのデザインではなかった。また、ホイール単品重量が11kgと重かったので、できるだけ軽いホイールを選んで、バネ下重量の軽減を図りたいと考えた。タイヤは当然新品タイヤなので、純正ホイールから外して組み替える方法もあるのだが、純正で装着されてきた某メーカーのタイヤは乗り心地はゴツゴツ感が大きく洗練度が低くかったので同時にタイヤも交換することにした。純正をそのままの状態で保管しておけば、必要によりいつでも簡単に元に戻せるメリットが有る。走りの性能で言えばタイヤ銘柄の選定とホイールサイズ選定(タイヤサイズとの関係で決定される)が重要となってくる。グリップに優れたタイヤを選ぶか、静音設計のタイヤを選ぶか、燃費性能に優れたタイヤを選ぶか自分の狙っている目的に合わせて選択は悩ましい。また、タイヤメーカー選択も性能に直結しているので一番重要な要素と言える。私の個人的な好みは輸入品であればミシュラン、国産であればブリヂストンになる。最終的に選んだホイール&タイヤは次のような組み合わせとなった。
ホイール:純正サイズと同じ17インチ×7J +45 トムス品番 42610-EP201 定価:47250円
ナット:トムス品番42623-VP001 250円×20個 定価:5000円
ナットアダプター:トムス品番42628-VP001(細くて長いソケット)
定価:1050円
タイヤ:ミシュラン・PRIMACY-LC サイズは純正と同じ215/45R-17
ホイールへのタイヤ組み込+バランス調整工賃を含めた全部の合計金額は約18万円だった。
ホイール単体重量は純正の11kgから、何と5.8kgでマイナス5.2kgと約半分ちかく軽い。4本で何と20.8kgの軽量化が図れた。一般車の軽量化は色々な制約(車検や純正保証等)に縛られていて、なかなか出来ることが限られる中での20.8kgの軽量化は非常に大きい。GTLは本皮シート他、色々な豪華装備満載なので車両重量は1350kgと重い。更に寒冷地仕様やら多数のオプションを装着したので1400kgを越えていると予想できる。見た目は華奢に見えるがワンピース鍛造品なので強度的な問題はない。勿論、縁石などにヒットした場合など不測の事態の修正等は強度低下に繋がるので交換する確率は高くなることだろう。最初に掲載したメニューの中でホイールとタイヤの項目を別々に分けてしまった。実際には同時に交換することが多いので、ここで交換後の感想を先に報告しよう。タイヤに関する詳細な話はタイヤの方で書くことにする。
納車されたホイール&タイヤで走行した距離は1415km.。早く違いを確認したいという気持が強くなってしまい、たった1415km走行しただけで早くもトムス+ミシュランに交換し現在もその仕様のままテストを重ねている。この原稿を書いている時点の走行距離は4393km。交換後、早くも約3000km走行したことになるが、納車時装着されてきた元のホイール&タイヤに戻す気持はただの1%さえ湧いてきません。但し、あくまで色々な方向から新型プリウスを探っているので、ある程度熟成してから元のホイール&タイヤに一度戻してみて、どう違う(変わる)のかを再び検証してみたいと考えている。それは多分、納車から1年後、または走行1万kmのどちらかで行おうかと予定している。
前置きが長くなったので最後に交換後のインプレションを書こう。
1:発進と同時に上質な(洗練された)転がり感を感じた。静かで滑らか。
2:凸凹路面でのバタバタ(ドタドタ)した感じと突き上げが消えマイルドで高級車に近い乗り心地となった。
3:路面に対するグリップ感(しなやかな感覚)が高まった。
このように高い出費を伴ってが交換してよかったと思わず頬が緩んだ。この感覚は経験者ならお解かりだが弊社の製品を最初に使用を開始したときの、あの感覚と同じと言えば伝わり易いのではないだろうか。ついつい一人でニヤニヤしてしまう。上記改善点の中で「2」の項目についてはホイール重量が軽減した(11kgが5.8kgと大幅に軽くなった)ことで上下動の時間や突き上げが減少(バネ下重量低減効果により)が得られたと判断できる。結果として大正解で、同じ車に乗る方で予算さえ許されれば、お勧めできる変更である。デザイン的な好みで本音を吐けばBBSのデザインも大好きである。他の車(ドイツ車)で使用していたがブレーキダストが短距離を走行しただけでもたくさん発生し真っ黒に汚れて掃除が大変だった。その点は新型プリウスならば、ほとんどブレーキダストが発生しないので軽量化の恩恵は少なくなってしまうがBBSにしようか最後まで悩んだ。但し、これからのHV車や電気自動車は静かさゆえに少しのロードノイズさえも気にしだしたら気になって仕方がないので、その改善策としての「軽量ホイール+静音タイヤ選択」の有効性が間違っていなかったことを確認できた。
3-1-7 窒素ガス使用と空気圧の追求
窒素ガスの体感度については「何も変わらない」「結構体感できた」と評価は大きく分かれるプチアイテムである。その人の望む期待度の大きさや、何を改善するために窒素ガスを入れる行動を起こしたのかの目的の違いで評価は大きく分かれてくると思われる。また、施工作業は業者に任せるために、どこまでこだわって作業を実施したのかでも多少は変わってきてしまう。ただ空気バルブを外して窒素ガスを一度だけ充填したのか、充填した後に一度そのガスを抜いて再度充填したのか、一度充填し、後日になって空気圧を点検して低くなった分を補充して規定空気圧に合わせたかの作業内容の違いで変わってくる。その理由は、一度抜いて充填しただけではタイヤの中に抜けきれなかった僅かな空気がどうしても残ってしまうからだ。従って、いかに全量を窒素ガスに置き換えることができるかで結果も少しは変わってくる。空気はタイヤ(ゴム)から抜け易い性質を持っているが窒素ガスは抜けにくい特性を持っているところが、私が一番利点に感じるポイントである。ご存知の方も多いように空気圧の低下は燃費悪化に大きく影響を及ぼしてくる。もちろん燃費だけではないが・・・。タイヤ空気圧を頻繁に点検して補充する手間暇を考えると普段からメンテナンスを自分で行う方は別だが誰でも行えるものではない。また、必要以上に空気圧をチェックすると、測定するたびに空気圧の低下を招いてしまうことになるのだ。充填直後の空気圧を長期間に渡って保つことが窒素ガス充填の一つ目のメリットとなる。二つ目のメリットは、乗り心地の改善効果であるが、使用しているホイール&タイヤ銘柄(重量、扁平率、直径や巾、その他)、サスペンションセッティング、ボディ補強(剛性)具合、シートの硬さ具合、運転方法(主に常用スピードと最高速度)等の要素により評価(感じ方)は大きく変化してくる。私が新型プリウスの改造を行う手法は、自動車メーカーの開発に近い。例えば、何かの改造を行う場合は、ひとつひとつを一度に装着するのではなく、一つを取り付けたり改造したら、その結果を検証する。何がどのように変化したのかと、全体のバランスはどうなのかの2点を重要視している。しかし、全てがそうではなく、デッドニングなどの作業に関しては、ドアーを1枚ずつ行って検証するよりも、全部のドアーを施工して違いを検証した方が効果具合を把握し易い。簡単な話、音や振動は少しの違いは解りにくいので、全部を行ってドンと変化した方が効果を実感しやすいという理屈になる。
乗り心地や操縦安定性を決定する要素は、先にも書いたように、ホイール&タイヤ銘柄、サスペンション、ボディ補強、シートの固さの合計値で決定される。例えば、タイヤを扁平率の低いサイズに変更、サスペンションを車高調に交換して車高を落とす(通常はスプリングをバネレートの高い物に交換する)、ボディ補強パーツを組み込む、シートを固い座り心地の物に交換すると、どうなるのか。この場合は全てが固くなる方向に変更されているために、路面からの突き上げの逃げ場(ショックを吸収する柔らかい部分)がどこにも無い仕様となってしまう。ボディのロールやボデイ等のヨレは大幅に抑えられるが凸凹路面での車の突き上げ感は大きくなり、場合によっては安定性や乗り心地を損なうことに繋がる。これ以上の詳しい解説はボディ補強バーの項目で述べることにする。
話を窒素ガスの話に戻そう。私の比較テストでは、最初にA:純正ホイール+純正装着○○○○(銘柄は伏せさせて頂く)タイヤに窒素ガス(前後輪共2.6kg)を充填した状態で納車。その次に、B:ホイールとタイヤは他の項目で書いている銘柄に変更(空気圧は同一で空気のみ)した。この仕様ですでにA仕様より、乗り心地、静粛性、ころがり感や路面への追従性は大幅に改善された。次に、C:窒素ガスを前後輪共2.6kgで充填してみた最終的な結果は、BよりC仕様の方が突き上げ感が減少し、ロードノイズも減少し路面に接する喰いつき感が更に増した感じで乗り心地の向上が体感できた。新型プリウスの評価として、私と同じGTL仕様は突き上げ感が大きく、ドタドタと騒音がして、乗り心地が悪いと評価する方が多いという情報が入ってくるが、私が手を入れた現在の新型プリウスに色々な方を同乗して走行すると、多くの方が「乗り心地が良いね」「想像していたより速いね」と驚いてくれる。弊社オイルの「轟」バージョンではないけれど、静かでスムーズで速いのでスピード感が麻痺してしまうのが最大の欠点?となってくるほどだ。燃費向上対策として多くの方が空気圧を前輪3.2kg、後輪2.6kg(メーカー規定値はGTLの215/45R17の場合、前輪2.3kg,後輪2.2kg)などと高めることがマニアの間で常識となっている。規定値から、あまりにも大幅に高めることはブレーキの効き具合やグリップ力の低下など大きなリスクを招くことに繋がりかねない。私が前後輪共2.6kgにしているのは3人乗車が多いこととカメラ機材やゴルフバッグなどの荷物を積んで走ることを想定している。1人で運転する機会が多いのであれば後輪を2.4kgくらいに落としてもよいだろう。私の場合で規定値より、前輪が0.3kg,後輪で0.4kg高くなっている。前輪は2.7または2.8kgが限界値と個人的には考えている。前後のタイヤ&ホイールが同一サイズなので定期的なタイヤローテンションを実施すれば、タイヤ肩減りは大きな問題とならないと推定している。ただ、燃費一番で考えるより全てのファインチューニングは安全第一、耐久性第二、燃費第三というのが昔から変わらぬ私のファインチューニングの哲学である。
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