2:元ニスモメカニックから見た問題点
2-1 燃費に振り過ぎた設定
 普通の車との大きな違いは4種類の走行モードがボタンひとつで変更できることである。モーターのみで走行するEVモード、燃費重視のECOモード、スイッチを押しシステムを立ち上げた際に選択されるノーマルモード、走りを優先するPWRモード。状況によってドライバーが好みのモードをボタンを押すことにより瞬時に変更できることは新しい技術の恩恵に授かっている喜びを感じる。カタログを見た際には解らないことだが実際に運転を始めると、幾つかの細かい点が気になってくる。近年、燃費規制と優遇税制の影響で、電子制御スロットル全盛となり、アクセル踏み込み量に対し加速を鈍らせている。これは発進時等の急加速が燃費悪化を招くための対策であり、過剰な制御は車の楽しさを半減させる一因ともなっている。これはドライバーが自らの判断でコントロールできるので必要性を感じない人も多いのではないか。
●私が一番使用頻度の高いモードはPWRモードで一番使用頻度が少ないモードがEVモードなのだが、右側からEV,ECO,PWRと並んでいる(ノーマルモードのボタンはない)この順序が正反対に並んでくれた方が使い易い。一番使用するPWRモードだが、システムOFFした際に記憶してくれないので、システムをONする度にPWRモードボタンを押さなくてはならないので不便を感じている。発進してから自分の感覚とのずれが大き過ぎて「あぁ、ノーマルモードだ」と気がつき、走行中に慌ててPWRボタンを手探りで押そうとすると、すぐ近くにあるハザードスイッチを間違って押してしまうことが起きる。カタログデータで燃費を謳い、そこに魅力を感じて購入した方も多いのでECOモードを設けたことには異論はない。しかし、世の中には様々な性格や車に対する知識を持った方が幅広く存在するので、燃費だけを意識し過ぎて混雑した街中でも平然とECOモードを選択する方もいることが予測できる。するとアクセルの踏み込み量に対して、車の発進が伴わない状況が突如として発生することになる。この状況下で右折や、見通しの悪い交差点、ブラインドコーナーでの合流など、ある程度の加速(より短時間での移動が安全確保に繋がる状況下)が安全確保に重要になってくるシチエーション下で、本人が意識するしないとは関係なく、極めて危険な状況を招くことに直結する。出足が良くなると危険であると考える反対意見も出てこようがアクセルとブレーキを踏み間違える人に、どんな対策をしても無駄であろう。アクセル(自動車)をコントロールするのは、あくまでドライバー次第であるのだから・・・。反応の鈍い車は、はっきり書けばとても危険。安全な車とは運転者の意思に忠実に反応する車であると私は考えている。また、「PWRモード=燃費が悪い」と思いがちだがダラダラと加速すECOモードと変わらない燃費をマークすることも可能である。


そこで改善点としては下記の5点が挙げられる。
1:右側から、PWR,ECO,EVモードにボタンを並べ変えて欲しい。
2:最後に選択したモードを記憶し、再起動時にそのモードで走行できるようにして欲しい。
3:ボタンに小さな凸部を設け、手探りでモードが解るようにして欲しい。
4:ハザードスイッチをモードスイッチから離れた位置(希望は右側の手前側)に移して欲しい。高速道路の渋滞最後尾などで手探りでハザードを点滅させる場合でも押し易いからである。
5:ECOモードを発進時に反応がもう少し良くなるようにしたほうが安全だと思う。何よりも大事なことは人間の生命に関わる安全性と公共道路の秩序(流れの阻害他)ではなかろうか。坂道で1台が著しくスピードを落とすと後続の車が次々とスピードを落とすことになり渋滞を引き起こし、渋滞の最後尾で追突事故が発生するなど悪い連鎖の引き金となりえる。

2-2 スポーツ走行時のブレーキ違和感

 新型プリウスが納車され、最初に一番違和感を感じたのは「ブレーキの効き具合」である。発進でモーターだけの発進で感激したり感動したりするのは、すぐに慣れてしまい気にしなくなってきても、ブレーキを掛ける度に違和感が襲ってくる。この感覚は速く走れば走るほど大きくなってくる。ハイブリッドは回生ブレーキが作動するために自分が予測して踏みこんだ感覚とのズレが生じてしまう。それは「踏み込み量+回生ブレーキ」という制御が行われるためであり、自分の意思とは関係なく他からの介入が行われるのが原因である。今や自動車もハイテク時代でドライバーが気がつかない裏側で作動している場合と、明らかに作動(制御)が表に出てきて感じる場合とがある。この辺りの味付け具合は技術の進歩やソフトの変更で変わってくる部分だ。熟成が進むほど違和感は軽減されてくる。まあ、普通に走っている状況では停止直前に少し踏力を弱め、カックンブレーキ予防を行うことは、車に慣れたドライバーであれば普通に行っているので問題は出ない。逆に言えば効きが弱いブレーキより、安全である。例えば、初めての道路で下り坂でスピードが出てしまい(音が静かだとスピード感が失われるため)、コーナーを曲がる状況で、予想以上に曲がりこんでいたため、慌ててブレーキを掛けたケースではお尻がアウト側に出易い。一度経験してしまえば対応できる出方ではあるが・・・。

2-3 静かさゆえに気になる音
 試乗車はミシュラン・プレマシーHPが装着されていた。注文時に「タイヤメーカーは選択できるのか?」と聞いたら「できません」という返事が返ってきた。私が注文したグレードはGTレザーパッケージ(以降GTLと記載)という一番高価なグレードである。装着タイヤはLグレードはグッドイヤGT3 185/65R15、Sグレードは195/65R15、その他のグレードは215/45R17で、タイヤは3種類。
BS TURANZA ER33
TOYO PROXES R30
MICHELIN PRIMACY HP
自動車はレースでも一般車でもタイヤは重要(乗り心地・燃費・ロードノイズ・運動性能・排水性・耐摩耗性等)で、その車の評価を左右すると言ったら大袈裟であろうか。最安値のLグレードは205万円で話題を読んだが私の購入したGTLは327万円と高価である。プリウスのグレードは、L,S,ST,G,GT,GTLと6種類あるので、グレード毎にタイヤ銘柄が決まっているのなら納得できるが、納車されたGTLのタイヤはTOYO PROXES R30が装着されてきた。試乗車の試乗距離は2km程と短距離ではあったが同じ道を走って見ると洗練されたMICHELIN PRIMACY HPのフィーリングに対し、TOYOはロードノイズは大きく、ゴツゴツ感(窒素ガス充填で空気圧は少し高めの2.6kg/cuに高めてある=指定空気圧は前輪が2.3kg/cu 後輪が2.2kg/cu)が違いとして伝わってきた。確かにタイヤサイドの肉厚は厚みがあり縁石のヒットからホイールを守るには適している。また、規定空気圧よりも前輪が0.3kg/cu、後輪が0.4kg/cuと高めにしてある影響も少しだけあるかもしれない。しかしながら、タイヤ性能の重要性が痛いほど解っている自動車メーカーの対応としてはいかがなものであろうか。ああ、それが解っていて試乗車だけはMICHELIN PRIMACY HP装着だったりして・・・。こう書いてくると、プリウスがうるさい車のように思われるかもしれないが、GTLに関しては、良く対策が盛り込まれていて静かである。静かさゆえに、少しの音が気になってしまい、更に静かな車にならないかと願うのは人間の限りない要求であろう。 

3-4 視界と重さは今後の課題
 新型プリウスは燃費スペシャルカーとして世に生まれ新化を遂げてきた。スタイルは空気抵抗を極限まで抑制すべく流れるようなスタイルに身を包まれた。私が新型プリウスを購入する前に乗っていた車は20年落ちのフェラーリ328である。20年前のフェラーリ328は、ある意味ではプリウスに似ている。巷で、新型プリウスは後方視界が著しく悪いと言われているがフェラーリ328の方が更に見難い。でも、バックカメラなど付けないで乗っていた。新型プリウスはバックカメラ付きで非常に見やすいと思ってしまう。但し、新型プリウスはお買い物でも使われるし、奥様方や年配者の方も多く購入されている。しかし、運転に熟練していない方々が日常の手足として使用した場合はAピラーが邪魔をして斜め右方向の視界は最悪であり、右折時や右カーブで神経を使う。勿論、少し頭や身体を左右に振って視界を確保しなければならない。だからこそ「視界が悪い」という評価になってしまう。これが夜間の大雨時や夕暮れ時では更に見難さを増す。


新型プリウスに比べ、素敵なレストランに彼女と食事に行ったり、走りを楽しむためのフェラーリ328と、用途がまったく異なってくると言うことだが前方視界に関してはフェラーリ328の方が遥かに優れている。このように安全性を考えると視界は、できるだけ良いに越したことはない。このことは新型車が世に出る度に「安全性を高めました」と謳う宣伝文句のわりには「見切りが悪くなり、鼻先が見えない」車が全盛となってきたことに矛盾を感じてしまう。確かに新時代に相応しいデザインを採用しないと魅力が薄れ販売力が低下してしまうという譲れないポイントは承知している。
 私は色々な車(約40種類)を愛車としてきた。その車輌重量の一部を参考までに見てみよう。メルセデスベンツ500SEC=1670kg,フェラーリ328=1440kg,日産マーチK11型1400 e-4W=820kg である。
購入したプリウスは本皮仕様でプラス40kg,寒冷地仕様オプションがプラス10kgで、車輌重量は1400kgと重くなる。ちなみにLグレードであれば1310kgと90kgも軽くなる代わりにタイヤサイズは185/65R15と細くなってしまう。15インチのホイール単体重量が6kgに対し、17インチ純正ホイール単体重量は11kgと1本で5kg×4本でホイールだけで20kgの差がある。新型プリウスの潜在能力から見れば、若者受けする安いLタイプにGTのサスペンション+軽量17インチホイールを装着したスポーツ仕様があったら受けると思うのは私だけであろうか。視界に対する要望や重量の要望を出しても改良を待たなければ、どうにもならない。見方を少し変えれば、先進のハイブリッドシステム搭載や装備の充実度を仔細に見てゆけば納得できる範囲に収まっているとも言える。先入観なくして運転してみれば、一昔前の高級大型セダン並の乗り心地と静かさを味わえるのだからレベル的には完成度は高い。走りにはまったく関係しない部分だが、Aピラー下側のフロントフェンダーとの合わせ目(隙間ではなく表面部分)が、左右共にピッタリと合っていなくて、1.5mm程の段差が見受けられる。ディラーの試乗車を確認したところ段差は無かった。車体番号から製造工場を推定すると、トヨタ車体富士松工場製造と思われるが、先進的スタイルを誇るプリウスだけに、少しがっかりさせられる。誰が見ても、ハッキリと解るほどの段差なのだから。ディラーでも確認していただいたが、今のところ積極的に修正していただける気配すら感じられない。勿論、修正するとなると、フロントバンパーからフェンダーまで、そっくり脱着する大袈裟な作業を必要とするが・・・。たかが、1.5mmされど1.5mm,悩ましい誤差だ。